レギュレーション変更により新しいルール満載の2014年シーズン。オーストラリアでの開幕戦を前にそれらのルールを少し解説しよう。
テクニカルルールの変更点
エンジン
2014年よりF1はハブリッド時代に突入し、従来の2.4リッターV8エンジンに替わり1.6リッターV6ターボパワーユニットが使用される。エンジンの回転数が18000回転から15000回転に減少したため、新しいパワープラントにはそれを補うための2つのERS(エネルギー回収システム)デバイスが搭載されている。1つはブレーキング時にエネルギーを回収するMGUーKで、もう1つはエキゾーストからの熱エネルギーを回収するMGUーHだ。ドライバーは1周あたり33秒間、161馬力の追加パワーを得られ、これまでのKERSとは異なりデバイスを使用する際にボタンを押す必要はなくなる。
メルセデス、フェラーリ、ルノーの3社がパワーユニットを提供している。
ギアボックス
ギアボックスは8速になり、シーズンを通してギアレシオが固定される。
空力
フロントウイングの幅が1800mmから1650mmに狭められた一方で、リアウイングは以前より浅くなり、下部ビームウイングが撤去された。DRSフラップは昨年より15mm広い65mmまで開放可能となった。
また、安全面を考慮してノーズの高さが引き下げられた。結果的にレギュレーションの解釈が分かれ、「アリクイノーズ」や「二股ノーズ」が議論を呼んだ。
燃料制限
各ドライバーが使用する燃料の量が1レースあたり100kgに制限される。昨シーズンと比較すると約50kg少なくなり、効率的な燃料の使用が求められる。
スポーティングルールの変更点
ダブルポイントシステム
F1史上最も不人気なルールの1つが最終戦でのダブルポイントシステムだ。2014年の最終戦であるアブダビGPで、ドライバーは通常の2倍のポイントを獲得することができる。例えば、優勝したドライバーは50p、2位は36p、3位は30pとなる。
このルールは、昨年、レッドブルがドライバーズとコンストラクターズチャンピオンシップで独走したことにより、バーニー・エクレストンが提案したものだ。
ペナルティポイント
ペナルティの判断基準があいまいなため導入されたのが、このペナルティポイントシステムだ。ドライバーは科せられたペナルティに応じてペナルティポイントを与えられ、それらはスーパーライセンスに記録される。シーズン中にペナルティポイントが12ポイントに達した場合、ドライバーに1レース出場禁止のペナルティが科せられる。
ペナルティポイントは12ヶ月間、スーパーライセンスに残り、その後、リセットされる。
5秒加算ペナルティ
些細な違反行為に対して5秒加算ペナルティが科せられる。ドライバーはピットストップ前にペナルティを受けなければならず、状況次第ではレースタイムに加算されることもある。
予選
2006年に導入されたノックアウト方式の予選スタイルは変更されないが、特に予選Q3でのアクションを改善するために些細な変更が施された。予選Q2は従来の20分から18分に短縮され、Q3は10分から12分に延長される。これにより、Q3での周回数が増えることが期待される。
また、Q3に進出したドライバーはQ2で最速タイムを記録した際に履いていたタイヤでレースをスタートさせることになる。昨年、レースに向けてタイヤを温存するためにQ3での走行を控えたドライバーが多かったが、新しいルールはそのような状況の改善を目的としている。
パーマネントナンバー
F1に参戦する全てのドライバーは2014年シーズンから固定のカーナンバーを使用する。ナンバー1はワールドチャンピオンが使用するため、各ドライバーは2から99までの番号の中から選択することになる。
新しいドライバー
2014年シーズンには3人のルーキードライバーが参戦する。
ケビン・マグヌッセン
マクラーレンからF1デビューを果たすマグヌッセンは21歳、デンマーク出身のドライバーで、同チームの育成プログラムのメンバーでもある。昨年、フォーミュラ・ルノー3.5を制した彼は、経験豊富なジェンソン・バトンのチームメイトを務める。
ダニール・クビアト
昨年、GP3を制したクビアトは、トロロッソとともにF1に参戦する。ロシア出身の彼はグリッド上で最も若い19歳で、2012年にはフォーミュラ・ルノー2.0アルプスでタイトルを獲得している。
マーカス・エリクソン
スウェーデン出身で23歳のエリクソンは、小林可夢偉のチームメイトとしてケータハムからF1デビューする。GP2で複数回の優勝経験があるエリクソンは、2009年に全日本F3、2007年にイギリスのフォーミュラBMWでチャンピオンとなった。
新しいチームメイト
レッドブル
世界耐久選手権に参戦することになったマーク・ウェーバーに替わり、ダニエル・リチャルドが今シーズンからセバスチャン・ヴェッテルのチームメイトを務める。
フェラーリ
5シーズンぶりにキミ・ライコネンがフェラーリに復帰し、フェルナンド・アロンソとともにワールドチャンピオン同士のドライバーラインナップを構成する。この最強の組み合わせは、同チームでは1953年のアルベルト・アスカリとニノ・ファリーナ以来となる。
その他の多くのチームがドライバーラインナップを入れ替えており、メルセデスとマルシアだけが昨年と同じ体勢で新シーズンに臨む。
新しいサーキット
2014年シーズンのレースカレンダーに2つの新しいサーキットが加わった。
ロシア
初のロシアGPを開催するのはソチ・インターナショナル・ストリートサーキットだ。冬のオリンピックの舞台となったオリンピックパークに設けられたストリートサーキットは1周5.853kmで、カレンダー上で3番目の長さを誇る。ロシアGPは第16戦として10月10日から12日にかけて開催される。
オーストリア
11シーズンぶりにオーストリアGPがF1に帰ってくる。1997年から2003年までA1リンクとして、1970年から1987年までエステルライヒリンクとしてグランプリを開催していたサーキットは、レッドブルリンクと名を改めて2014年の第8戦を開催する。