ニッサン-デルタウイングは、ベン・ボールディがデザインし、ウイングを省き床下でダウンフォースを発生させるとともに、排気ガスを劇的に減少させるために車重とドラッグ、さらにマシンを組み上げるコンポーネンツを大幅に減らし、大胆な軽量化を達成しているマシン。ニッサンの直噴ターボエンジンを搭載し、300馬力というパワーだが、軽さを活かし最高峰のLMP1とLMP2の間のパフォーマンスを実現するとされている。
3月にニッサンエンジンの搭載が決まってから、セブリングやヨーロッパでテストが繰り返されてきたが、4月末には本山の加入も決定。本山、クルム、そしてマリーノ・フランキッティというトリオでル・マンに参戦することになっている。
これまでのレーシングカーの概念からは大きく異なるそのフォルムから、いったいどんな走りをするのかは世界中から大きな注目が集まっているが、本山とクルムに、実際のフィーリングはどうなのかを聞いてみた。
「思ったよりもきちんと走るし、思ったよりも速い。乗ってて面白いしね。最近フォーミュラに全然乗っていなかったけど、F3やジュニアフォーミュラに乗っているような感覚」と語るのは本山。実は本山は、クルムがセブリングでドライブした後の感想を聞き、「絶対にこんな細いタイヤで曲がる訳がない!」とデルタウイングの走りを信じられなかったそうだ。
しかし、実際にスネッタートンでドライブした本山は、「見た目からは想像もできないけど、普通に走るんだよね。すごく不思議。ダウンフォースが効くからステアリングも重くなる。思わずマシンから降りた後に、『なんで!?』ってクルマの前を見にいっちゃった(笑)」と笑う。「セブリングでクルムが『ハンドルが重い』って言ってるのを聞いて、『年のせいだろ』なんて言っていた(笑)」
クルムもやはり本山と最初の印象は同じだったようで、「ハイスピードコーナーではダウンフォースがすごく効く。まだ限界が見つけられない」と言う。また、クルムによればストレートではウイングが無い分加速の伸びが良いという。通常、レーシングカーではウイングによりダウンフォースを発生すると、フォーミュラであろうがGTマシンであろうが空気の壁に当たるが、ニッサン-デルタウイングはウイングが無い分、伸びていくのだとか。
そんなさまざまなメリットがあるニッサン-デルタウイングだが、セブリングではギヤボックスにトラブルが発生するなど、軽量化されたデフやブレーキなど、まだまだ開発する部分が多いとクルム。「小さな問題はまだまだある」と言う。
「僕が思っていた以上に世界中から注目されているから、やっぱりレースでずっと走っていたいし、その上で優れた燃費性能などにチャレンジしていくのは、すごく価値があるし面白いと思う」と本山が語るとおり、ニッサン-デルタウイングの目標は完走と、優れた省燃費性能の証明。しかしその一方で、ドライバーにも新鮮な驚きをもたらす新たなレーシングカーとしての一面も持っているようだ。
[オートスポーツweb]